褒めることと叱ること、これらはビジネス場面に限らず、教育や療育など、様々な領域で絶えず比較されてきました。「アメとムチ」なんて言葉もよく耳にしますよね。

よくテレビなどの教育番組でも、「褒めてのびのびと育てるべきだ」「いや、愛をもって厳しく叱ることほうが人は育つ」と意見が分かれるところをみます。

はたして、人の教育に関してどちらのほうが効果的なのでしょうか。

「そんなの、人や状況によってちがうから、つかいわけだろ」というそこのあなた、

その通りです。

二つのうちどちらかが絶対的に良い教育方法とは言い切れません。

しかし、ここで終わってはなんの議論にもなりません。そこで、モラルや倫理という観点(叱ることは人権が…などの話のこと)は一度置いといて、行動分析という立場から、褒めることと叱ること、それぞれの特徴を述べていきます。

 

 

行動の原理

はじめに、行動分析には行動の原理と呼ばれる大原則があります。

行動の原理は主に以下の4つにわけられます。

・正の強化ー行動の後に良いことが出現することで、その後の行動が増えること

・負の強化ー行動の後に嫌なことがなくなることで、その後の行動が増えること

・正の弱化ー行動の後に嫌なことが出現することで、その後の行動が減ること

・負の弱化ー行動の後に良いことがなくなることで、その後の行動が減ること

なにやらわかりにくいですが、正/負→刺激が出現/なくなる、強化/弱化→行動が増える/減る、と整理するとわかりやすいです。

 

これを見ると、正の強化で望ましい行動に対しては褒めて、正の弱化で望ましくない行動は叱ればいい、と思うかもしれませんが、そう単純ではないのです。

望ましい行動に正の強化を用いることは問題ないのですが、望ましくない行動に対して正の弱化を用いる際には非常に注意が必要です。

行動分析学会(2014)によると、正の弱化はその効果が一時的で状況に依存しやすいと述べています。

例えば、会社で遅刻してくる部下がいたとします。遅刻は望ましくない行動です。なので、あなたは正の弱化の原理に基づき、ものすごく怒りました(この場合、遅刻という行動の後に怒られるという嫌なことが出現している)。すると、次の日には時間通り来てくれました。

 

一見すると問題が解決されたように見えなくもないです。ですがこの方法では、遅刻が減ることは短期的で、怒るあなたがいない日には平気で遅刻が再発する可能性があります。つまり、正の弱化は、短期的には遅刻を減らすかもしれませんが、長期的にみると効果的ではありません。

また、人間は同じ刺激を繰り返し経験するとその刺激になれてしまうので、いずれはあなたに怒られてもなにも感じなくなる恐れもあります。

じゃあこの問題を解決するためにはどうすればいいのでしょうか。

一番単純な答えは、時間通り出勤したときのメリットを増やし、デメリットを減らし、時間通り出勤するという行動に強化を使うことです。

この部下にとっては、時間通り来ても、早く来たぶん仕事が増え、なにもいいことがないかも知れません。これでは、時間通り出勤する行動は増えません。そこで会社や管理者の方は、時間通りに出勤するとどんなメリットとデメリットがあるのか考え、メリットのほうが多くなるよう解決方法を考える必要があります。

 

以上のように、行動の原理の観点からは、正の弱化を頻繁に用いるより、正の強化を用いたほうが効果的です。正の弱化は緊急性が高く、一時的にでもすぐに行動を減らす場合には有効ですが、長期的にみてその人の行動がどうなるか考えると微妙ですね。

この話題はまだ続くので、また次回お伝えします。

ではまた