「なにやってるんだ!」

と声をあげて怒鳴る人、皆様もこれまでに何人も見てきたと思います。

これまでの記事にも少し書いていますが、部下を指導する際に怒鳴るのは行動論の観点から見ると、上司にとっても部下にとってもデメリットが多いです。

しかし、怒鳴る人も怒鳴る人なりに理由があるのです。

ここで怒鳴る人に対して、「感情的だから」「あの人は攻撃的な人だから」と理由づけしてしまうのは、全く科学的ではありません。

以前の記事では、プロンプト(行動を促すヒント)などを使って部下の適切な行動を促進させるという指導される側の行動についてお伝えしました。

そこで今回は、なぜ怒鳴るのか、指導する側の行動について考えていきます。

負の強化

怒鳴る行動を維持している要因の一つとして、負の強化が考えられます。

負の強化:行動した後に何か悪い刺激がなくなることで、その行動が増えること。

(厳密にいうと良い刺激や悪い刺激という表現は間違いなのですが、わかりやすくしています)

怒鳴る前には、怒鳴る人にとって悪い刺激があったのに、怒鳴った後で一時的に悪い刺激がなくなってしまうので、怒鳴る行動が維持されているのです。

ここで、具体例を2つほどあげてみます。

・ビジネス場面

新入社員Aさんが仕事中に無駄話をしています。上司のBさんは「話してる暇あんなら仕事しろ!やる気あんのか!!」と怒鳴りました。

Aさんは「うるせーな、ちょっとくらいいいじゃん」と思いながらも、「すいません」といい、無駄話をやめて仕事に取り掛かりました。その後Bさんは、「若いもんには厳しくしないとあかんな」と思い、Aさんに対して頻繁に怒鳴るようになりました。

ここでは、Aさんの無駄話あり(怒鳴る前の状態)⇒Bさんが怒鳴る⇒Aさんの無駄話がなくなる(怒鳴った結果)

という現象が生じています。

Bさんにとっては怒鳴る行動をした後に、悪い刺激がなくなり、改善されているので、怒鳴る行動が増えるのです。

(厳密に言えば、「すいません」という言語刺激も出現しているので、正の強化も考えられます)

・教育場面

教師のCさんは、今年の4月から新しくクラス担任を受け持つことになりました。はじめての担任で楽しみにしていたCさんでしたが、いざ教室に行ってみると生徒たちが無駄話しており、自分の話を聞いてくれません。そこでCさんは、「うるさい!静かにしなさい!!」と怒鳴りました。すると教室はシーンとなり、Cさんは自分の話を続けました。その後、Cさんは生徒たちがうるさいときは頻繁に怒鳴るようになりました。

ここでは、教室がうるさく、騒々しい(怒鳴るまえの状態)⇒Cさんが怒鳴る⇒静かになる(怒鳴った結果)

という現象が生じています。

Cさんにとっては怒鳴った後で、静かになっているので、怒鳴る行動が増えています。

 

両者の例に共通しているのは、怒鳴った後に良くない刺激がなくなっていることです。

負の強化が起きているので、怒鳴る行動が現れるのは当然といえば当然だったわけです。

両者の行動を機能的に見る

結局なにが言いたいかというと、指導する側とされる側、両方の立場で考える必要があるということです。

なんであの管理職の人はすぐ怒るんだろう、行動分析の観点からはデメリットが多いのに…

あの人はダメな上司だな、と決め付けるのは間違っているのです。

行動分析の観点からは、怒るほうにも怒るという行動が強化されているからなんだな、と理解するほうが適切です。

なので、人材教育の問題について改善したい、と思っている方は、

どうやったら従業員が伸びるかだけではなく、それを指導する指導者もどうやったら伸びるような指導を行うようになるのか考え、指導者側の環境も考える。

そうしないと、どんなにすばらしい育成方法を指導者に伝えても、改善されません。

最後に

今回は怒鳴る側の行動について考えましたが、私は怒鳴る行動を容認しているわけではありません。

ただ、怒鳴る人=ダメな上司、と言ってもしょうがないということです。

怒鳴る側の人も怒鳴る代わりに正の強化をつかうよう強化されるような環境作りが必要です(ややこしいですが重要なこと)。

ではまた。

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