まずはやらせてみて、失敗してもそこから学ぶことがある。

教育に関して、このような考えを一度は聞いたことがありませんか。

これは一見、正しいように思います。

しかし、物事には何事もいいことばかりではありません。

この教育も、対象を間違えると有用な効果が期待できなくなります。

トライアンドエラー(試行錯誤学習)

上記のような教育を和製英語ではトライアンドエラーなどと表現されます。

日本語では試行錯誤学習ですね。

ではこの方法はどのような特徴があるのか、どういう人に適しているのか考えていきましょう。

トライアンドエラーは文字通り、まずはやらせてみて(トライ)、失敗して(エラー)、その失敗から学んでいくというものです。

一般的にも多く知られている方法で、企業の人事や管理職でも当たり前に使われています。

ただ、誰にでも用いるべき方法ではありません。

なぜならば、トライアンドエラーの効果を最大限にするには、基本的な作業スキルが身についている必要があります。

初期の初期、例えば新入社員に対して、トライアンドエラーを用いるのはオススメできません。

もちろん、手探りながら失敗を基に学べることもあるでしょうが、時間がかかります。

成功のモデルを理解していて、基礎的な部分が身についているからこそ、成功したときと失敗したときを比較して成長できるのです。

初期の段階でトライアンドエラーを使えば、ただ失敗率が高く、比較検討もできないので成長にも時間がかかってしまいます。

では、まだ基本的なスキルや行動が身についていない人を育てるにはどうしたらいいのでしょうか。

エラーレスラーニング(無誤学習)

日本語では無誤学習なんて言います。

これも文字通り、そもそも失敗させないように環境を整え、成功体験を多く積ませます。

失敗経験が少ないので、指導場面後も自ら新しい企画の提案をしたりと、自発して仕事に取り組む動機づけが高まりやすいです。

とはいえ失敗させずに長期的に成長してもらうには様々な工夫が必要です。

・仕事や行動の前に十分なヒントや情報を与える(プロンプト)

・仕事や行動している最中に手助けする(プロンプト)

・モデルを見せる(プロンプト)

・対象とする作業を簡単なものから徐々に難しくさせる(シェイピング、スモールステップ)

・成功に伴い、徐々にヒントや手助けを減らしていく(フェイディング)

などの工夫が考えられます。情報やヒントの与え方も、口頭なのか視覚的に伝えるのか、など多様な方法があります。

この方法のデメリットは、準備や指導者側にある程度の負荷がかかることです。

トライアンドエラーでは「とりあえずやってみろ」でいいかもしれませんが、エラーレスラーニングでは工夫が必須です。

結局どうすればいいの?

人材教育に関しては、絶対的な正解はありませんが、使い分けと検証が重要です。

新入社員として基礎が不十分な社員には、まずはエラーレスラーニングで教育し、基礎が身に着いた後に少し高度なスキルや仕事を教える際は、トライアンドエラーで教育する。

このような使い分けが大切です。

どんな場面、どんな対象者にも全く同じ方法を用いるのではなく、柔軟に使い分けましょう。

そして、使い分けて導入してみたら、主観的でもいいので有効に機能しているか検証しましょう。

結局は人材育成も、問題解決やパフォーマンス向上と同じく、改善策を立てる→導入→検証→見直しのサイクルです。

今回は、人材育成において仮説を立てる際に、役立つ2つの教育情報を提供しました。

全く根拠がないまま仮説を立てるよりもずっと有用だと思います。

※今回はフィードバックについてお話しませんでしたが、どちらの教育でもフィードバックは非常に重要ですので、忘れずに。

ではまた。

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