世の中には検査や診断であふれています。

性格検査やストレス検査、社会人能力診断、などなど…

皆様の組織でも入社時などで取り入れているところも多いのではないでしょうか。

ただ、その診断は何を対象に、どのように役立っているのか答えられる人は少ないです。

 

以前、私と経営者(Aさん)との会話でこんなことがありました。

Aさん「わが社では毎年必ず○○力を測定する検査をやっている」

八重樫「それはどのように役立っているのですか?何か配属先などの参考にしているのですか?」

Aさん「改めてそう言われると…。一人一人と実際に関わって決めているから、この検査で仕事内容や配属先を決定することはないし…」

八重樫「個人個人を丁寧に見ようとしていることはとても良いことだと思います。しかし、その検査については活用法を考える必要がありますね」

 

この経営者Aさんの考えは素晴らしいと思います。

診断結果を頼りに、画一的に意思決定(ここでは仕事内容の決定など)してしまうのではなく、しっかり一人一人の個人差を考えた上で、決めようとしています。

診断結果を頼りに「この人は積極性が高いから営業の仕事を多くやらせよう」というようにしてしまうのはとても危険です。

black and yellow poison sign

なぜ危険か?

それは検査や診断には、

「不特定多数の人の平均値を想定している」

という前提条件があるからです。

その診断結果があなたが困っている目の前の問題解決やパフォーマンス向上に役立つかは全くの別問題です。

これはビジネス書や自己啓発書などに書かれていることにも当てはまります。

いくらグー〇ルや、ヤ〇ーなどの大企業で成功している手法でも、それがあなたの役に立つかは別です。

当然ですが、社員も給与もなにもかも違います。

それなのに、手法だけ取り上げてマネしてもうまくいかないことは多々あります。

そして、うまくいかなかったときに、

「グー〇ルやヤ〇ーではうまくいっているのに、うちでうまくいかないなんて、やっぱりうちの社員はレベルが低いのかな」

となりがちです。

これは改善されない原因を社員たちにしており、いつまで立っても問題解決に繋がりません。

 

少し話がそれましたが、診断結果は平均を想定しているので、

あなたの組織や対象とする個人とは別の事例であるということです。

では検査や診断は意味のないものなのでしょか?

いえ、そんなことはありません。

適切に使用すれば非常に役立つ情報となりえます。

仮説生成や介入アイディアの道具にする

問題解決やパフォーマンス向上するためには、

現状分析→改善策の仮説を立てる→改善策導入する→導入後分析→改善策続行(または変更)

地味で単純ですが、これが一番です。

そして、診断や検査が大いに役立つのは改善策の仮説を立てるときです。

基本的に問題を引き起こし、パフォーマンスを下げているのは、

特定の行動が不足/過多だからです。

そして、行動を増やしたり、減らしたりするときには、何がその人の強化子(行動後に出現するとその後の行動を増やすような刺激のこと)になるか考えます。

強化子は人によって異なります。

お金や時間、笑顔や称賛など、それぞれ強化子になる人もいれば、ならない人もいます。

そのため本来であれば、改善策を導入する前に、現状の行動をしっかり観察・分析して、情報を集めます。

しかし、そんな余裕や暇がないこともあると思います。

そんなときに診断結果や検査結果が役立ちます。

ほとんど情報がない組織や人の場合、診断結果を基に強化子を仮定し、改善策を導入してみるのはアリです。

例えば、性格検査で

「外向性が高く、一人で作業するよりも人と接したり話したりすることに喜びを感じます」

と出た場合、まずは称賛や話し合いの機会などが魅力的な強化子になるのではないか

と仮説を立てることができます。

その後、診断結果を基に強化子を仮定したが、本当に効果あるのか分析していきます。

そして行動が適切に増減していればその仮説のままでOKですし、改善が見られないのであれば別の改善策を考える必要があります。

このように、診断や検査は、はじめに仮説を立てるときに役立つ道具となります。

 

気を付けなければならないのは、診断や検査の結果自体を改善する目的としないことです。

このケースは非常によくあります。

「前年のコミュニケーション能力診断ではCランクだったのが、Aランクに上がった!よかった!」

というように。

診断結果や検査結果で出たことが重要なのではなく、実際に適切な行動が増え、問題行動が減り、パフォーマンス向上したのかが重要なのです。

あくまで診断結果の所見はただの文字や概念なので、現実の行動を改善対象としましょう。

行動を改善するための仮説のために診断結果という道具を使うのです。

道具に振り回されないように、道具の改善そのものが目的とならないように気を付けましょう。

 

最後に

今回は診断や検査についてお伝えしました。

私はなにも、検査や診断を否定しているわけではありません。

しかし、検査や診断を行うこと自体で終わっていることは、非常にもったいないことだと思います。

やはり、実際に社員(またはご自身)のパフォーマンス向上や問題解決に役立ててこそ、意味があります。

検査や診断の結果を改善策の仮説に役立て、実際に行動や成果が変化するのか検証してみる。

これが重要です。

ではまた。

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