最近ビジネスにおけるABAのお話をさせていただく機会が増えてきました。

非常に嬉しいことです。

その中で何人かの方から行動の測定・記録について、このようなことを言われました。

①はじめにベースライン測っているヒマあったら介入したほうが良くないか

②そもそも測定や記録自体やってないから、測定・記録するだけで行動に影響してしまうかもしれない(正確なベースラインの不足)

③測定・記録なんてめんどい、大変、忙しい

(ベースラインとは介入する前のこと、介入とは改善策を導入すること)

 

研究者として、研究の一環として行うならば、

妥当性や信頼性、因果関係の立証

などがとても重要な要素なので、①~③は「何いってんの?」レベルの意見かもしれません。

ただ、研究ではなく、問題解決のためにABAを活用したい人にとっては当然の意見だと思います。

なので、今回は私が言われたことのある①~③の意見について実践家の立場から考えていきます。

①測ってるヒマあるなら介入しろよ

「測定して様子みてないで早く良くしろよ。なんでわざわざ遅らせてんの?」

と言いたいのかと思います。

これはコストの問題があります。

コストとは、介入についてです。

もし、特別な介入を実施しなくても、

現在すでに改善傾向があったり、行動の記録をとっているだけで改善したりすることがあります。

そうした場合、必要以上に労力をかけて、介入することは無駄なコストになってしまう恐れがあります。

ビジネスにおいても、こうしたことは多数起きています。

その改善策には効果がなく、もともと改善傾向があっただけなのに、

お金と労力をかけてその改善策を使い続けてしまう…。

これも介入する前のベースラインを記録していないと、

その介入に効果があったのかわかりません。

「わからない」の画像検索結果

また逆に、本当は効果がある介入なのに、

主観や経験則で効果がないと思い込んでしまう恐れもあります。

本当は効果あるのに、効果なしと思い込んで中止してしまうことは、

ビジネスにおいて損益です。

このように、ベースラインを測定しておくことは理由があるのですね。

データに基づいて、適切な判断(介入を続けるべきか、止めるべきか)をする重要な材料になります。

 

ただ、どんな場合もベースラインを測定することが最善とは限りません。

ベースライン測定している間に企業が潰れてしまっては、元も子もないですからね。

緊急性が高い場合は応急措置として、即座の何らかの介入が必要です。

Mason (1992) という、ビジネスで行動分析を活かすことについて書いてある論文でも、

「最初の目的はクライエントを安定させることであり、その後で、問題の根本的原因に取り組む。」

と素早い対処の重要性を述べています。

一様に

絶対にベースラインを測りましょう!

と言えないのが難しいですね。

 

参考文献

Mason, M. M. (1992).  アメリカの企業やビジネスにおける行動分析学 行動分析学研究, 7, 117−131.

ネットで無料で見れます↑

②ベースラインの不足

ABAをビジネスに活用する上で、改善したい成果や行動について、

そもそも測定や記録をやっていない

というケースはよくあります(というかほぼこの状態)。

なので、新しく成果や行動を測定するツールや記録紙を導入すると、

それだけで影響を与えてしまうことは十分考えられます。

私も厳密なベースラインというのは、ビジネスでは不可能だと思います。

しかし、重要なのは何か改めて考えて欲しいのです。

問題の解決です。

皆さんは研究者として論文を出したいのではなく、困りごとを解消したいのです。

ベースラインはそのための材料です。

コンサルティングとして、他社に介入を実施する場合は別ですが、

自社や自分の問題解決を考える場合は、

「測り始めたら改善した」

これは素晴らしいことだと思います。

まずは問題解決することが何よりですからね。

次点で

本当に効果あったのか

のような話になります。

ですので、まずは測り始めた現状の成果・行動がどうなのか見てみましょう。

それで十分問題の解決になるならば、

やったー!

でいいと思います。

③めんどい・大変・忙しい

これは非常に大切な意見です。

【測定すること自体の大変さ】はABAをビジネスに導入する上で、最も重要な部分です。

私も実践してみて、この測定がまず続かない!

いくら測定方法を教え、測定ツールをこちらで作成しても、続かない!

ただ単に成果や行動のデータが取れるだけではなく、かなりの工夫が必要です。

では測定のポイントは何か?

ひたすら楽に!

これにつきます。

具体的には以下の3点に気をつけてください。

 

・人を介さず、自動的に測定できないか?

最近は色々と便利なツールが増えてきましたよね。

アプリやソフトなどで楽に測定できないか考えましょう。

人に観察&記録をお願いしても良いのですが、

かなり大変です。

機械を用いて自動的に測定する方法をぜひ検討してください。

 

・行動の所産を対象にする

行動そのものを測定するのは難しいです。

ビジネスにおいて、対象の組織や個人の行動を逐一観察するのはほぼ不可能です。

なので、行動の所産を測定対象にします。

行動の所産とは、行動した結果あらわれるものです。

例えば、報告書を書くというのは行動ですが、

書いている部分を観察するのは難しい。

そこで、行動の所産として、【出来上がった報告書】を対象にします。

他にも、

時間どおりに出勤する(行動)→出勤簿の記録(行動の所産)

なども一例です

 

・測定だけを増やさない

現在の仕事+測定

と新たに測定の労力を増やすと長続きしません。

大変さが増すわけですからね。

【+測定】

ではなく、

現在の仕事の代わりになれないか、または他の仕事を減らせないか考えましょう。

いくら行動チェックシートを作成して、渡したとしても、

ただ単に渡したのでは【+測定】です。

ですので、今やっている仕事の代わりを探します。

例えば報告書や日報など。

今は報告書を定期的に提出しているなら、その報告書自体を測定のツールとして、

行動が勘弁に記録できるものに変えるのです。

○×やレ点式などにして。

「チェックシート」の画像検索結果

これであれば、記録する方も、現在の報告書がより楽になるわけだから、継続しやすいです。

【-労力】ですね

また、代わりが見つからないなら、

測定・記録のための時間を作ってあげたり、その分の労力を減らす必要があります。

例えば17時退社の人に17時まで仕事をやらせて、その後記録させるのではなく、16時50までを仕事時間として、残り10分で記録時間とする。

他にも、今までやらせていた雑務のうち1つをなくして、測定・記録を行う。

など。

これだと測定の労力はかかりますが、その分仕事も減るので、抵抗が少ないです。

 

最後にもう一度、

測定はなるべく楽に!

今回は3点お伝えしましたが、まだまだ測定のための工夫やアイディアはあるはずです。

ここが行動分析家の腕の見せ所と言っても良いくらいです。

以上、今回は測定についてのお話でした。

ただ測定一つとっても沢山考えることがありますね。

ではまた。

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