榎本あつしのBLOG(人事制度の学校・評価をしない評価制度・A4一枚評価制度とABA:応用行動分析学)

人事制度や社労士やら応用行動分析学の研究やら猫やら馬やら庭やらで毎日過ごしています。

評価は賃金と連動させない。

2020/03/05

SNSで見かけた言葉で、
おお!と思ったものがありました。

 

「人間の本性が出る場面は2つある。困難に直面した時と、正義が自分側にある時の言動だ。」

 

 

確かにね。

 

 

これは使わせていただきます。

 

 

 

さて、本題です。

 

 

評価は賃金と連動させない。

 

今回も、ネタ切れのた 重要なことをお伝えしたいため、
拙著「A4一枚賃金制度」のコラムより抜粋です。

 

 弊社で実際に人事制度を構築、導入している場合、
半分ぐらいの会社が、人事評価は給与・賞与とは連動させずに切り離しています。

 

人事評価は実施するのですが、それで出た結果、
たとえば「総合Aプラス評価」とか「通期合計73点」
といったように出た結果に従って、昇給額や賞与額を決めないのです。

 

給与や賞与の額は、あくまでも会社の利益次第です。

 

利益が出て、賞与をたくさん出せるときは、
それぞれの社員の等級に応じた配分で出すようにする、
もしくは多少“鉛筆なめなめ” でも、経営者の判断で差をつけて、
支給額を決めるのです。

 

「いやいや。それではいったい何のために評価をしているのだ」と、
怒られてしまうかもしれませんが、
もちろん、メリットがあるから切り離すのです。

 

「何のために」人事制度を導入するのかというと、
「人材育成 と業績向上のため」です。
これこそが人事制度がもたらしてくれる一番の大きなメリットです。

 

人事評価を賃金制度と切り離しても、これは実現できます。

 

いやむしろ、切り離してしまったほうが、
大いにその効果が発揮できるのです。

 

一般的に、出てきた評価結果は次のような昇給表などと連動して、
反映させることが多いです。

 

 

このような明確な昇給表をつくって従業員にオープンにして、
これだけの評価を取ったら、これだけお金が増えますよ、と示していくのは、
「にんじんぶら下げモチベーション」方式です(私が勝手に名付けています)。

 

では、これの何が問題なのか。

 

会社、とりわけ中小企業は、
毎年同じように昇給させていくことは難しいのです。

 

年によって業績は大きく異なります。
大手企業のようにベースアップや定期昇給を実施することは、
厳しい場合もあります。

 

そのようななかで、
上記のような昇給表をオープンにしていたとします。

 

すると、いまさら金額を変えることはできません。

 

では、何が起きるかというと「調整」です。
「評価自体の調整」が 始まるのです。

 

たとえば、M3等級のAさんという社員がいます。
Aさんは、今期は自他ともに認める素晴らしい頑張りで、
「A+」評価を取りました。

 

しかし、会社自体は円高や法改正、ライバル企業の台頭もあり、
我慢の時期で、赤字となる状況です。

 

M3等級のAさんの評価はA+ですから、
上記の表に当てはめると、2万円の昇給…。

 

でも、今期の状況ではそんなに上げることはできない、
となってくると、始まるのが「評価の調整」です。

 

2万円は難しいけれど、なんとか7,000円なら…ということで、
A+であった評価を「B+」に調整する作業が始まります。

 

満点の5点だった「リーダーシップ」という評価項目を4点にして、
4点 だった「コミュニケーション」という評価項目を3点にして…。

 

「よかった、よかった。なんとかB+に収まった。
よし、Aさんは7,000円の昇給で決定。
では次の社員は…。」

 

これはまったく、 よくはないですね。

 

自他ともに頑張ったと認めていたAさんのモチベーションはどうなるでしょうか。

 

会社はちゃんと見てくれない、
頑張っても結局は 評価を調整されてしまうのだろう、
と気持ちが離れていきそうです。

 

一方、逆のケースもあります。

 

配置転換で新たに配属になったB さんがいました。
同じくM3等級です。
評価した結果、期待より全然ダメでBさんの評価は「C」となりました。
7,000円の降給です。

 

しかし、辞めてしまったら困るな、
やる気をなくしても困るし、
生活が大変だと言っていたし…。

 

そこで、C評価をB評価に調整する作業のスタートです。
1点だった評価項目を3点に、2点だった評価項目も3点に…。

 

よしよし、なんとかB評価になったぞ。
よかった、よかった。

 

これもまったくよくありませんね。

 

このBさんは、できないところが明確にならずに、
評価が上がってしまっているのです。

 

本来、人事評価では、
「成果を出したこと、成長したこと」は大いに評価して、
動機づけにつなげたいのです。

 

会社はしっかり頑張っていることを見ているよ、
と伝えるべきなのです。

 

一方、「足りなかったこと、まだ身についていないこと」は、
本人も上司も課題として認識して、
次期以降の成長につなげていってもらいたいのです。

 

評価を調整すると、
そのどちらもできなくなってしまいます。

 

人事評価を賃金と切り離すと、
どちらも大胆に思い切ってできるようになります。

 

成果や成長が明らかな人は大いによい点をつけ、
課題のある人にはしっかりと低い点をつけて、
認識してもらう。

 

賃金を決めるための「調整」という呪縛から逃れられるのです。

 

本日の日課 52点(原点はここ)
(日課とは、オリジナルで作製した「行動アシスト手帳」に書かれている毎日やる25項目のうち、何項目やったかを点数化したものである。どんな項目かはナイショ。)

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