「平均への回帰」と褒める、叱る。
ショートショート。犬と猫。
犬:
この家の人たちは、餌をくれるし、愛してくれるし、
気持ちのいい暖かいすみかを提供してくれるし、
可愛がってくれるし、よく世話をしてくれる・・・。
この家の人たちは神に違いない!
猫:
この家の人たちは、餌をくれるし、愛してくれるし、
気持ちのいい暖かいすみかを提供してくれるし、
可愛がってくれるし、よく世話をしてくれる・・・。
自分は神に違いない!
さて、本題です。
今日は知っておくとためになる現象。
「平均への回帰」をお伝えします。
★「平均への回帰」と褒める、叱る。
「ABA(応用行動分析学)では、
よい行動をしたら、褒めるという好子を出現させることで、
行動が自主的に起こるようになるとのことだけど、
本当でしょうか。」
「私の経験だと、褒めた後はやらなくて、
叱るとやるようになるような気がするのですが。」
このように疑問を持たれる方が、
いらっしゃることがあります。
そして、このように言われることは、
あながち間違いではなく、
でも、真実でもありません。
これは、「平均への回帰」、
という現象で説明ができるのです。
「平均への回帰」は、もともとは、
19世紀のイギリスの遺伝学者、フランシス・ゴルトンの研究により、
使われたのが最初といわれています。
ゴルトンは、親と成人した子供の身長についてのデータを取り、
親の身長に対して、子供の身長の平均値と標準偏差を確認し、
次のことを導き出しました。
低い身長の親から生まれる子供は、それよりも少し高い身長となる傾向があること。
高い身長の親から生まれる子供は、それよりも少し低い身長となる傾向があること。
とくに親の身長が平均から離れていて、
とても高い、またはとても低いほど、
この傾向が強く見られました。これが平均への回帰なのです。
例えば、とても良い点を出した後は、
次はそれよりも低く出る傾向になります。
逆に低いときは、次は高くなる傾向になります。
・痛みがひどいときに、お祈りをしてもらうと痛みが和らいだ。
・ひどい成績だったので、厳しくしかったら、成績が上がった。
このように、ある現象のピークや例外的な状態のときは、
その次は「平均への回帰」のために、そのピークよりも平均に近いことが、
起きる確率が高くなります。
これを、痛みが強いときの「お祈り」が、痛みを和らげた、
ひどい成績のときの「叱ったこと」から、成績が上がった、
と、ただ単に平均に近くなるという、
自然の変動の傾向が出ただけにも関わらず、
存在しない因果関係を作り出してしまうことを、
「回帰の誤謬(ごびゅう)」といいます。
「勘違い」と、いうとわかりやすいでしょうか。
つまり、
「やらないときには、叱るとやる」
「やっているときに、褒めてもやらなくなる」
というのは、
「平均への回帰」が起きているだけであり、
叱ったから、褒めたから、というのは、
「回帰の誤謬」になっている、ということなのです。
「やっているとき」は、そのあとは「やらなくなる」傾向があり、
「やっていないとき」は、そのあとは「やるようになる」傾向がでるのは、
平均への回帰を考えると、自然的で当たりまえなのですね。
そして、やっているときに「褒める」ので、
「褒める」とやらなくなるような気がして、
やっていないときに「叱る」ので、「叱る」と、
「やるようになる」気がするだけの「誤謬」なのです。
そして、長期的に行動を見ていくと、
やはり原則通り、行動のあとに褒めることで、
自発的な行動の出現は増えるという結果が出ています。
一度や二度の結果では、
回帰の誤謬により、
うまくいかない気がしますが、
大事なのは長期的に測定していき、
行動が増えているということを見つけられること。
やはり測定は大事。
「見える行動・測れる向上」を、
しっかりやっていきましょう。
ちょっと難しい言葉が出ましたが、
このような回帰の誤謬は、とても多くあります。
・叱ったら成績が上がった
・薬を飲んだら具合がよくなった
・政策を実施したら景気が向上した
・雨が続いていたので雨ごいをしたら晴れた
本来は、放っておいても起きる結果が、
いかにも、それをやったから、と因果関係をつくってしまいます。
組織で考えると、
悪いときには、叱ることが多く、
悪いときには、ほっておいても上がることが多いため、
叱る=上がると、勘違い(これが誤謬ですね)してしまいやすくなります。
長期的には、問題が多く発生する組織になってしまうので、
気を付けなければならないのです。
本日の日課 56点(まあ、その、基本何とかなる派の私向きです。)
(日課とは、オリジナルで作製した「行動アシスト手帳」に書かれている毎日やる25項目のうち、何項目やったかを点数化したものである。どんな項目かはナイショ)