目標設定はABAやOBMだけではなく、一般的な組織でもよく用いられていますし、子供の頃からよく聞く言葉でもあると思います。
ビジネスの世界だと、「目標管理制度(MBO)」というのもよく聞く制度かもしれません。
ざっくりと目標管理制度について説明すると、
「ピーター・ドラッカーが提唱した制度で、遂行者本人と上司で個人目標を主体的に設定し、その目標達成度に応じて評価する」
というものです。
しかし、この制度は、成果主義になりがちな点や適切な評価が難しい点などいくつかのデメリットもあり、近年ではパフォーマンスに目を向けてマネジメントしていこうという風潮になりつつあります。
私が専門としている組織行動マネジメント(OBM:ABAを組織適応したもの)でも、目標設定はよく用いられ、パフォーマンスに目を向けた実践&研究を積み重ねてきました。
そこで今回はパフォーマンスを影響を与える、効果的な目標設定とはどのようなものか、組織行動マネジメントの観点から紹介していきます。
目標は行動の先行条件として設定する
ABAでは、先行条件(A)ー行動(B)ー結果(C)の枠組みで行動を捉えるのですが、目標は行動前に設定するので先行条件としての役割が強いです。
先行条件の中でも、さらに細かくみていくと、①きっかけとしての役割(厳密には弁別刺激といいます)と、②結果の価値を高める役割(厳密には確立操作といいます)に分けて考えられます。
①きっかけとしての枠割
→これはそのままですね。目標設定することで(A)、目標達成という結果(C)が行動を増やすものとして機能する可能性があります。
②結果の価値を高める役割
→目標設定しておくことで、結果の価値を高めることも考えられます。
例えば、目標設定しておくことで、同じ上司からの称賛でも行動を増やすものとして大きく機能するかもしれません。目標設定していないときの称賛はそうでもないけど、目標設定している状況下であれば、よりポジティブな影響を与えるみたいなイメージです。
このように、目標設定は行動する前に設定することで、行動に影響を与えるものですが、同時にフィードバックと組み合わせるとより効果的であると言われています。
パフォーマンス・フィードバックと組み合わせる
目標はただ設計するだけでは十分な効果を発揮しません。
フィードバックと組み合わせてこそ、真価を発揮します。
目標設定について調べた研究(Locke & Latham, 2002)では、目標設定とフィードバックを組み合わせることで、目標設定単独よりもフィードバック単独よりも、より効果的になると言われています。
逆に、目標に対して明確な進捗のフィードバックがないと、レベルや方向性の調整、ゴール達成するための戦略の調整が不可能です。
グラフィカルにフィードバックする
目標設定と組み合わせるフィードバックもなんでもいいというわけではありません。
パフォーマンスの発揮や遂行状況がひと目でわかるような、グラフでフィードバックすることが効果的であると言われています。
Will & Redmon (1997) という研究では、事務職員を対象に4つのパフォーマンス向上に取り組みました。
現状、目標設定+言葉でのフィードバック、目標設定+言葉+グラフの3ステップで介入したところ、グラフでのフィードバックが一貫してパフォーマンス向上に有効でした。
また、ヒューマンサービスの組織を対象に、行動改善に取り組んだ研究(Gil & Carter, 2016)もあります。
こちらでは、現状、グラフフィードバック、グラフフィードバック+目標設定の3ステップで介入したところ、やはりグラフフィードバック+目標設定と組み合わせたほうが有効でした。
このように、目標設定とフィードバックは1セットと言っていいほど、重要です。
しかも、抽象的に「もっとしっかりやれ」という言葉だけではなく、パフォーマンスの遂行状況がわかるようなグラフでフィードバックすると、より効果的である可能性が高いです。
※パフォーマンス・フィードバックについては、より詳しく調べている研究や実践もありますので(例えば、Sleiman et al, 2020 など)、それについてはまた今度お伝えします。
効果的な目標設定
ここまで色々と目標設定に関して、お伝えしてきましたが、研究者ではないビジネス人や実践家の方は、
「で、結局どうすればいいの?」
と思ったかもしれません。
なので最後に、具体的にどうすれば効果的な目標設定の取り組みができるか?
どのような目標がパフォーマンスを向上させるのか?
について、記載して終わります。
(以前私がやった組織行動マネジメントセミナーの資料抜粋)
目標設定や目標管理制度を導入しているけど、上手く機能していないという組織は一度見直してみましょう。
ではまた。
Yu
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